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●スタン・ブラッケージ 映画の極北 メールニュース
NO.17
2002.10.11

○「LOVE SONGS」大阪上映終了!
○スタン・ブラッケージ回顧展(仮称)実行委員会会議報告
○「LOVE SONGS」をめぐって

☆スタン・ブラッケージ ハンドペイント作品集「LOVE SONGS 」大阪上映(at シネ・ヌーヴォ)は好評のうちに終了しました!ありがとうございました。☆

9/28には成安造形大学学祭での「LOVE SONGS」自主上映もあり、若い学生に多く見ていただけたようです。このような学祭他の自主企画もお待ちしています!

☆スタン・ブラッケージ回顧展(仮称)実行委員会会議 報告☆

(2002.9.29/ミストラルジャパン)文責:片山

■参加者
星野出穂、関口太郎、前田敏行、水野真亜沙、水由章、片山薫、黒川芳朱、山口卓司、中山広之、大谷友花、原田聖子、後藤寛隆、坂本里英子、説田礼子、中沢あき

■経過・現状報告
○開催候補会場との話し合いの経過報告(水由、片山)
○各会場が予算を組む時期なので、早急に企画書作成が必要。開催時期は2003年11月〜2004年3月ころにしたい(水由)
○ライブ、展示、映像企画について報告(片山)
○とちぎあきら氏のアドバイス。どこかの映画祭での招聘の検討、カタログ作成の助成を出している企業メセナなどについて。(水由)

■回顧展開催候補会場について(交渉中)
*横浜赤レンガ倉庫1号館
使用可能な場所:
3Fホール〈300席弱(可動式)、ロビー、バーカウンター、楽屋等有り〉
2F展示室〈A.B.Cの3室あり、エレベーターロビー、ラウンジも使用可能〉
1Fエントランスホール
上映:11/22〜24 11/28〜30
展示:部屋の空き状況によって日程考慮
*高知県立美術館
*愛知芸術文化センター
*福岡市総合図書館
*神戸アートビレッジセンター
*仙台メディアテーク

■回顧展内容検討

◆フィルム上映◆
暫定15プログラムくらい。今後、アメリカへ行っての試写で決定していく。

◆講演、レクチャー、シンポジウム◆
体調の具合でブラッケージが来れなかった場合も想定。共作しているフィル・ソロモン等も検討。日本にいるアーティスト等でも検討。

◆ワークショップ◆
こどもたちがフィルムに好きに着色する、傷をつけるなどしたフィルムをビュワーで見たり上映する企画はどうか。→ブラッケージに指示を出してもらってこちらでワークショップする、などの方法もある。

◆展示◆
横浜のスペースを使っての想定。例えば、1Fのエントランスには回顧展のポスター、ブラッケ−ジ上映のポスターなどをはり巡らし、床下のスペースにも何か展示物を用意など。上の階へあがってもらうための呼び水づくり。2Fではブラッケージ博物館のような、資料的な部屋をひとつ作る。他の部屋に関してはいろいろ検討中。展示と上映の共通券なども考慮。

◆映像◆
ブラッケージのフィルムにインスパイアされた作品制作を作家に依頼して作ってもらう。映像に限らず、インスタレーションやパフォーマンスも考慮。→展示、映像関係の担当責任は黒川、山口

◆ライブ◆
ホールを使ってのライブかどうかは未定。ブラッケージに影響されたミュージシャンなどのコンピレーションCD作成も考慮。→音楽批評家の佐々木敦さんに相談することになった。担当は中沢、片山

■担当者決定

カタログ作成:山口、佐藤他工学院の方々。説田、坂本、水野も協力。編集委員を依頼してから始動する。
基金、企業メセナ等→手分けして調べる
写真記録:前田
ビデオ記録:関口

■今後の予定

●ひと月に1回くらい会議開催を予定。
●各担当で進めたことは随時、実行委員会MLで報告。

☆「LOVE SONGS」をめぐって☆

◆黒川氏に答えて

黒川芳朱氏は「スタン・ブラッケージ映画の極北メールニュース」で次のように書いている。

「映画の極北メールニュースNO.12の中で那田尚史氏がハンドペイント作品集を抽象表現主義の作品と断定されていることに疑問を感じ、投稿させて頂きます。もっとも那田さんの文章は発表を前提に書かれたものではないような気もしますが、読んでしまった以上仕方がないし、これを機会に議論が生まれればと思いあえて取り上げさせて頂きました。実は、私も『Fs』にブラッケージと抽象表現主義の関連性を書きました。しかしあくまで関連であって、ブラッケージのハンドペイント作品集を抽象表現主義と断定はできないし、すべきでもないと考えます。」

そしてその理由として、抽象表現主義絵画は画面が巨大であること、ブラッケージの作品は映画、であること、の2点を挙げている。そして、私に反論を促している。

しかし、こういう議論は「ためにする」ものであり、本当に実りのない論争に終わるだろう。まず、ブラッケージのハンドペイント作品を見て、抽象表現主義の影響を感じない批評者はどうかしている。事実黒川氏本人が、次のように述べている。

「私が感じた抽象表現主義とハンドペイント作品の共通点は、激しい筆遣いや荒々しい色彩の使用という表情における共通性、中心も地と図の関係もないオールオーバーな画面という構造の共通性、さらに「絵(ピクチュア)ではなく出来事(イベント)としての絵画」という思考の共通性です。人間の内面への信頼も思考の共通性として上げられます。」

なんのことはない、自分も同じように抽象表現主義との共通点は認めているのである。自分が「ブラッケージ作品は抽象表現主義と共通点がある」というのはかまわないが、他人が同じ事を言うと噛み付く、というのはいかがなものか、私は黒川氏の立論が分からない。

黒川氏によれば、このように抽象表現主義との共通点はあるものの、絵画としての抽象表現主義は、画面が巨大であることと、映画と異なる、という2点により、相違があるという。

映画と絵画の違いは、子供にでも分かることだ。要するにブラッケージは映画というメディアの中で抽象表現主義の絵画を動かしてみたかったのである。画面が巨大という点については、私は異論がある。私は学生時代にポロックの展覧会にいったが、驚くほど巨大だとは感じなかったし、16ミリのスクリーンを眼前に見るほうがむしろ巨大な印象を受ける。

黒川氏の「反論」は、反論になっていない。
しかし、この議論を少しでも実りあるものとするために、何かを言わねばならない。そこで『Fs』最新号の黒川氏のブラッケージ批評に対して、印象を述べる。

簡単に言えば、黒川氏は、抽象表現主義を説明するのにホワイトヘッドなどを引用しながら、量子力学の世界では因果律が壊れている=非決定論が採用される、と述べて、ブラッケージの作品を「こうして非決定論的時間モデルが誕生し、スクリーンの上に因果律が存在しない時間が流れ始める」(P25)と結論づけている。

私はこの手の批評を、「権威主義的演繹批評」あるいは「トコロテン批評」と呼ぶ慣わしにしている。現代芸術を批評するのに、アインシュタインの相対性理論や、ハイゼンベルグの不確定性理論を持ってきて、かれらの世界像から演繹して芸術の本質を見る、というタイプの批評は、かなり多い。浅田彰(京大)のように、何故か旧帝大系の批評家が使いたがる論法である。黒川氏はもっとアナーキーな人間だと思っていたが、その批評を読む限りでは、どうもそうではないようだ。

 私は、この手の批評を全く信用していない。もしどうしてもそういいたいのなら、抽象表現主義の作家達が、量子力学から影響を受けた事実を実証的に証明すべきである。

 芸術を批評するのに量子力学の世界の特殊な現象を用いるというのは、余りに短絡的であるし、なんというか、理科系の苦手な文科系批評家の劣等感の裏返し、という思いがする。

 第一、非決定論というのは、極微の世界を観察するときに、観察行為が現象そのものに干渉するという特殊な事情から生まれるものであり、その事実と、人間世界の現実とは全く関係が無い。例えば、黒川氏が非決定論に従って生きるとしたら、三日もたたずに精神病院に送られるだろう。

 例えば、腹が減るとする。因果律を無視していれば、飯を食うこともできない。信号が赤だとする。因果律を無視して横断すれば車にはねられるだろう。電話番号さえ押すことが出来ない。電車にも乗れない。買い物も出来ない。会話も通じない。狂気の世界である。

人間の営為は古典物理学の因果律の世界に成立しているものなのだ。ごく一部の概念芸術を除けば、このような視点から作品を批評するのは、木に拠って魚を求める愚を犯すものである。

黒川氏がいうまでもなく、抽象表現主義の映画が論理性を超え、因果律に収まらないのは当たり前のことである。そこに量子力学を持ち出すのは、ただの権威付けに過ぎない。

批評は、作品と鑑賞者との真摯な対峙の中に成立する。作品世界が客観的に存在するのではなく、作品世界は見る者と作品の中間に出現する。そのときどのような論法を使うかは、作品の本質に従って変化する。印象批評が適しているときもあれば、政治批評が適しているときもある。どんなアングルから切り込んでくるかで、批評者の才能や倫理性が分かるものだ。

私は、抽象表現主義を量子力学から批評する、という感性を信じることは出来ない。

私がブラッケージのハンドペインティング作品から得た印象は、明らかな抽象表現主義の影響と、抽象ゆえに羽ばたく想像力の楽しさだった。そこで、私は某掲示板に次のように感想を書いた。全文を引用する。

「◆昨日、ミストラルジャパンでブラッケージの新作を見てきた。作品は全てハンドペインティングによる抽象表現主義の作品ばかり、ほぼ60分。退屈になるのでは、という予想を裏切り、結構楽しめた。

あるときは自分がバクテリアとなって鉱物の結晶の中に潜り込み、ある時は、宇宙空間のなかに放り出されて銀河のかなたを旅したり、と、素材が抽象であるために、逆に連想が自由に羽ばたいた。まさに「視覚の悦楽」を味合わせてくれる作品群だった。

素材は35ミリのジャンクフィルム。それにペイントした上で自家製のオプチカルプリンターを通して16ミリに焼き付けているらしい。多重露光、再撮影、ピント送りなど多彩な技術が使われて、非常にダイナミックな動きを生みだしている。

確かに、今時抽象表現主義にこだわり続ける、というのは反動には違いない。それは奥山順市が狭義の構造映画にこだわり続けているのと同じ意味で反動的である。しかし、反動の苦行僧のような生き方も、また芸術家の典雅な姿勢の一つにはちがいない。

だからプロモーションには戦略が必要だろうが、それは水由さんの手腕に任せよう。

僕自身は、試写会のあと、風邪ぎみであるにもかかわらず、あたまがスッキリした。

抽象の愉悦、というものだろうか?意味の無い世界で遊ぶというのは、確かに快感である。それを教えてくれた、という点では昨夜は未知の体験をした貴重な夜だった。

水由さん、ガンバッテネ。」

この私の批評と、黒川氏の批評とどちらがいい批評なのか。それは読者に任せよう。

私は、最終的に自分の感受性が素直に感じたものを素直に吐露する批評を好む。時に作品の時代背景や作家の思想を調べることもあるが、それは、作品がその行為を要求している場合のみである。芸術作品は、新しい感動、新しい知覚の方法を教えてくれるものである。パッと目が開け、思いがけない戦慄を感じる。それが全てなのである。

批評はただの分析ではない。そこに鑑賞者の新しい感動が伝わらなければ、批評の値打ちは無い。

黒川氏は、世に多くある権威主義的演繹批評を、なにかすばらしいものと誤解してしまったのだろう。私は、自分の批評がなるべくそういうものにならないように、物理学や哲学の概念の網から零れたものこそ大切にしようと、心がけている。皮肉にもお互いの方向性が全く逆なのだ。

要するに私は、自分の言葉で語る、それが、批評の第一歩だと信じている。上記の私の批評(感想文)は、掲示板に載せたごく短いものだが、少なくとも自分の言葉で書く、という原則は守っている。

最初に書いたように、黒川氏のメールニュースの反論は反論になっていない。ブラッケージが抽象表現主義の影響を受けていることを、お互いに認め合っているからだ。

黒川氏が、いやあれは浮世絵の影響を受けている、とでも言ってくるのであれば、立場が異なり、論争は成立するのだが・・・。だから、私もそれに反論は書けない。ここでは、私の批評のあり方についてちょっとした意見を述べてみた。

那田尚史(映像研究家)

※現在、実行委員会MLで活発な意見交換がなされています。御興味のある方、お手伝いいただける方は、stan@mistral-japan.co.jpまで、ご連絡お待ちしています!

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