●スタン・ブラッケージ 映画の極北 メールニュース
NO.2
2001.7.27
『BRAKHAGE EYES』(BOX東中野にて上映中)もいよいよ8/3(金)まで!!
7/21には、映像学校でブラッケージを伝導する、ほしのあきら氏によるトークで盛り上がりました。7/28は『RUSH!』公開中の瀬々敬久氏によるトークショーがあります。
6月に訪ねたボウルダーでのブラッケージの近況報告第一弾をお知らせします。
※このメールより前の投稿が見たい方は
http://www.freeml.com
にてユーザー登録するとMy Pageで御覧になれます。
☆『BRAKHAGE EYES』ラストトークショー!
7/28(土)PM10:00より瀬々敬久氏(『RUSH!』『HYSTERIC』監督)によるスペシャルトークショー開催!
☆『BRAKHAGE EYES』地方上映、続々と決定中!
◆9/5〜9/7 名古屋シネマスコーレ
http://www.cinemaskhole.co.jp/
◆9/22〜10/12 大阪シネ・ヌーヴォ
http://terra.zone.ne.jp/cinenouveau/
『BRAKHAGE EYES』及び『DOG STAR MAN』も上映!!
☆「スタン・ブラッケージは健在なり!水由章のボウルダー報告 part1」
ロッキー山脈の裾野にあるデンバー国際空港から車で北西へ約1時間半、コロラド州ボウルダーに到着した。ボウルダーは金メダリスト高橋尚子らマラソン選手が合宿を行う場所として日本でも知られた街である。そしてボウルダーには世界の個人映画作家の象徴的存在のスタン・ブラッケージが住んでいる。今回私はブラッケージ氏と今後の日本での作品上映について打合せのために出かけたのだった。
スタンは昼の11時半から1時まで地元の“ボウルダー・カフェ”で日課のハンドペイント作業を行っている。好物のアイリッシュコーヒーを飲みながら、ジャンクの35ミリムービーフィルム(ポジ)に歯科医で使う平たい器具でエマルジョンを削り、絵の具をダイレクトにペイントしている。ハンドペイント作品はスタンがここ10年以上手掛けているシリーズである。
日本では、コロラド山中に隠り、他人との接触を断って自給自足の仙人のような生活をしている? イメージが強いスタン・ブラッケージではあるが、現在は教鞭をとるコロラド大学近くに、再婚した奥さんのマリリン&二人の子供たちと住んでいる。
“ボウルダー・カフェ”で作業中のスタンに、近所の奥さんたちが世間話しにやってくる。作業がはかどらないであろうに、スタンは気軽に話し相手を努めながら嫌な顔など見せず作業を続けている(地元の有名人としてはつらいところか…)。軽く昼食をとった後、ポジフィルムと絵の具などのハンドペイント道具一式だけを入れた小さなリックを大きな背中で背負ってスタンは大学へ向かっていく。
大学ではドキュメンタリー論の授業があった。参考作品を見ながらゆっくりと生徒に語りかけるようなスタンの話しが続く。また毎週日曜日の夜には同じ大学で、“サロン”と名付けた一般の人も参加可能の映画の上映会を無料で長年続けている。今回は新作を含めたスタンのハンドペイント作品が5本上映された。
日課のハンドペイント作業、大学での授業と、毎週日曜日の“サロン”での上映会…。スタン・ブラッケージは今なお精力的に活動を続けている現役バリバリの映像作家であった。
現在ライフワーク的に続けているハンドペイント作品についてスタンはこう語ってくれた。
「自分の気持ちを入れようとしていない。無意識のものを出そうとしている。」
新作の『LOVE SONGS』(2001年)では黒を中心とした絵の具が激しくゆれ、最初は厚みのない絵の具が途中からべとっとしたタッチに変化して激しい愛のイメージを感じることができたし、『Micro
Garden』(2001年)ではフィルムの剥がれたエマルジョンとペイントの具合がオーバーラップで重なることによって、画面が宝石のようにも見え、また岩にも、そしてボンドのようにも見える不思議な体験をすることができた。
ブラッケージの長年の活動で、地元ボウルダー周辺にも実験映画作家が登場している。サロンではその代表格のフィル・ソロモンやジョエル・ハートリングも参加していた。
スタン・ブラッケージは家族、地元の友人たちに囲まれて悠々自適の生活か! と言えば全くそうでもないようだ。コロラド大学側とは授業内容をめぐって衝突しているようだし、年間数本以上手掛ける作品のプリント経費の捻出も大変だと聞く。またボウルダーの物価の高さと離婚もあり、生活は決して楽ではないのだ。ブラッケージほどの有名人でも、個人で映画を制作し続けることは日本同様に金銭的困難は付きまとう。
そこでスタンは2002年の秋にボウルダーを離れ、カナダ・バンクーバーへの移住を決断したと言う。自身を「愛国者」だと言うスタンがU.S.A.を離れることはよほどの決断であろう。
そして来年2002年はスタンが映画制作をスタートしてから50周年を迎え、地元ボウルダーでは2001年秋から2002年の春にかけて毎週月曜日にスタン・ブラッケージ作品を連続上映が決定した。ここ1年スタン自身にとって最後の大きな転換期となるであろう。
水由 章(みずよし あきら/ミストラルジャパン代表)
(ドキュメンタリー映画専門メールマガジン「NEO」に掲載された記事より構成しました。「NEO」の詳細はこちらでご覧ください。)
http://www.msec.ne.jp/mlmgn/neo/neo_index.html
★次号(来週始め)では『BRAKHAGE EYES NIGHT』での那田尚史氏(映像研究家)トークショー抜粋をお送りします。
ニュース配信:ミストラルジャパン
[スタン・ブラッケージ 映画の極北 ML]
ご意見、御感想など投稿はstan@freeml.comまでお願いします。参加希望も受け付けています。
|